噛む力(咬合力)で起こる歯への影響

3月の歯科医師通信は、「噛む力(咬合力)で起こる歯への影響」についてお伝えします。

咬合力が原因で起こること

> 歯の磨耗(まもう)、咬耗(こうもう)
> 知覚過敏
> マイクロクラック
> アブフラクション
> 歯の破折
> 歯の位置移動
> 歯の壊死

当院で良く遭遇する症状順に説明させていただきます。

歯の磨耗(まもう)、咬耗(こうもう)

歯の摩耗、咬耗というのは、文字通り歯の表面を覆っているエナメル質や象牙質がすり減る現象ですが、これは歯磨きのブラッシング圧が強かったり、研磨剤が多く含まれている歯磨き粉を使う以外にも、噛む力が強かったり、年齢が高くなるにつれ歯の表面に現れることも多くあります。

知覚過敏

知覚過敏のメカニズムに関して説明します。

歯のエナメル質の内側には象牙質という組織があり、無数の象牙細管という管が歯の中心に向かって伸びています。象牙質がむき出しになると、外部からの刺激(冷たい飲みものや物理的な刺激)が象牙細管を通って歯の内側の神経に伝わり、結果として瞬間的に鋭い痛みを感じるようになります。これが知覚過敏症状の痛みの出方です。

マイクロクラック

一目みただけでは問題がないのに実は歯のエナメル質にひびが入っているマイクロクラックというものがあります。目では見えないような小さな傷で、過大な咬合力、はぎしり、くいしばりなどによりできてしまうことがあります。これが原因で歯がしみたり、咬合痛を訴える患者さんもいらっしゃいます。

アブフラクション

大きすぎる咬合力により歯の根っこ付近がくさび状態に欠けたように見える症状をアブフラクションと言います。

過度な噛む力や横揺れの力が生じると、エナメル質の結合が少しずつ破壊されていき、歯の表面が剥がれるようにしてくさびができます。
よく硬い歯ブラシでも歯の根元付近に似たような症状がみられますが、歯の隣接に及ぶような歯の全周に及ぶようなくさび状の欠損は硬い歯ブラシの横磨きだけでできる状況ではありません。

歯の破折

大きすぎる咬合力により歯が折れる場合があります。

歯が折れる原因は外傷や歯質の劣化など、複数の要因が絡むことが考えられますが、はぎしり、くいしばりなどの咬合力が原因かどうかは、周囲の歯の状況を診査する必要があり、歯の磨耗、歯の破折が多数歯に見られる場合は、特に注意が必要です

歯の位置移動

歯が正常な位置からズレることを歯の位置移動と言います。

歯周病の進行とともに歯をささえる骨が破壊されてくると、咬合力に耐えられず、歯は力の方向に傾斜することがあります。

歯の壊死

通常の噛む力以上の負荷が加わり続けると、歯の内部の血流が少なくなっていき歯の神経が死んでしまうことがあります。一見、虫歯や治療歴がないのに歯が死んでいる可能性があるのです。時々、なにも症状がないのに歯が死んでしまってレントゲンで根っこに膿がたまっている方も見られます。

佐藤デンタルクリニックではまず患者さん歯の状況から咬合力の影響や噛み合わせなどとの関連を確認しております。咬み合わせの調整やナイトガードの使用検討し、対策を練ります。知覚過敏がひどかったり、歯質の欠損量が多い場合は対策として、詰めものをさせていただくこともあります。