歯が抜けたあとにそのまま放置することで起こる影響

虫歯や歯周病や事故などで歯が抜けた、または歯科医院で歯を抜いてもらった際、そのまま放置してしまう患者さんがいらっしゃいます。

確かに「通院が面倒」「治療にはお金がかかる」「痛みや腫れなどのトラブルがない」などのご意見もあるかもしれません。

しかしお口の健康は様々な要因によって保たれています。

一本歯を失っただけでも、バランスは崩れ、様々な悪影響が出てしまうのです。

1.歯が傾いてくる

歯が抜けてしまうと、当然ながらその歯があったスペースが丸ごと空いてしまいます。

歯というのは、空いてしまったスペースを埋めようとする働きがあり、隣り合う歯が傾いたり、移動したりします。

更に長い間放置してしまうと、抜けた歯のスペースに隣の歯が傾き、更には抜けた歯とは隣接していない歯も傾いてくる可能性があり、こうなると歯の傾きが連鎖する事態に陥ってしまいます。

2.噛み合うべき歯が伸びてくる

歯が抜けたまま放置すると、抜けた歯と本来噛み合っていた歯が伸びてくるようになります。

これは噛み合う歯がないために、骨の中に埋まっていた部分が刺激を求めて出てくるからです。

こうなると上顎・下顎にかかる力のバランスが崩れてしまい、噛み合わせに影響を及ぼします。

3.特定の歯に負担がかかり、全体の歯にも歯並びに影響、歯の寿命が短くなる

歯が抜けたまま放置すると、右側の歯がない人は左側で、左側の歯がない人は右側で咀嚼するようになるのは自然な流れと考えられます。

歯がないなら歯がある方だけで噛むようになっていくと、偏りが生じて一部に負担がかかる噛み合わせになり、全体の歯並びが乱れて、かみ合わせが崩壊していきます。

口は28本の歯にそれぞれ適切な力をかけながら、咀嚼機能を維持しています。

しかし、1本でも歯が抜けてしまうと、27本で噛むことになります。

この際、失った1本分の負荷を27本で均等に分け合うのではなく、特定の歯に過剰な力が集中する可能性が高いです。

そうやって歯の寿命が短くなっていくのです。

4.発音や滑舌が悪くなる

本来あるべき位置に歯がないとことで、発音や滑舌にも影響を及ぼします。

歯のすき間から空気が漏れることで、特にサ行やタ行、ラ行、ハ行が発音しにくくなることがあります。

5.顔から身体のゆがみ、不調の原因へ

ほとんど一方でしか噛まない状態を偏咀嚼(へんそしゃく)といいますが、これは下顎がズレて顔がゆがむ原因にもなります。歯がない部分は見えなくても、お顔立ちを変化させ、結果として審美的な影響も出てきてしまうのです。

また、噛み合わせのずれは慢性的な肩こり・腰痛リスクも上昇させます。

他にも食べ物をきちんと咀嚼することができないということは、胃や腸への負担が増すことを意味します。

咀嚼機能が低下し胃腸に負担がかかることもあります。

6.噛む力が衰えて認知症リスクが増加する

噛むことは脳の活性化と密接な関係があり、残存歯が少ないほど認知症の発症リスクは高くなります。

咬み合わせのバランスが崩れると認知機能に大きな影響を及ぼすことも明らかになってきており、きちんと噛めなくなると、脳への刺激が少なくなることで、認知症のリスクを高めてしまうのです。

7.顎の骨が痩せていく・治療選択肢への影響も

歯が抜けたまま放置すると、咀嚼の刺激が伝わらないため、歯肉や顎の骨はどんどん痩せていきます。

顎の骨の状態が良くないとインプラント治療は難しくなりますし、傾いてスペースがない部分には義歯を入れることも難しいので、伸びた歯や傾いた歯を削ったり、矯正したり…など治療の手順も増え来院回数も増え患者さんにとって負担も増えていくことが考えられます。

☆まとめ☆

「たかが1本歯が抜けただけで…」と思われるかもしれませんが、過度に負担がかかった歯は、トラブルが起こりやすくなり、歯を一本失うことで負の連鎖が起こる可能性があります。

また、将来的により多くの歯を失ってしまうことも少なくありません。

見た目や咬み合わせにも悪影響を及ぼしてしまいます。

負の連鎖を止めるためにも、歯を失った際は早急に歯科医院で治療を行い、健康な口腔機能を早めに取り戻しましょう。