歯ぎしり・くいしばりを中心とした「噛み合わせ」

今回は歯ぎしり、くいしばりを中心とした「噛み合わせ」についてのお話です

皆様は一日何回噛む動作をしていると思いますか?
実は1860回も噛む動作をしております。

「噛む」という動作は頭蓋骨、上顎、下顎、筋肉といった、複雑な要素で成り立っており、筋肉が動き、顎の関節を中心にして顎が動くことによって行われます。

正常な噛み合わせは、通常、上の歯1本に対し下の歯2本が噛み合います。
そして、顎関節と咀嚼筋が健全な状態であり、顎の関節も安定した位置で上下の歯が最大に噛み合う位置にあることが良いとされています。

しかし、この状態がしっかり揃っている人は全体の約10%程度と、一致している人の方が少ないです。言いかえると約90%の人は何らかの不正な嚙み合わせ(不正咬合)を有していることになります。

人は噛み合わせに普段の状態で多少の問題があっても、生体の適応能力で順応して、不快症状はでてきません。しかし、不適切なかぶせものの装着や歯ぎしり、くいしばりなどで問題が増えてくると、車が脱輪するように不快症状が生じてきます(体調の変化やストレスなどで抵抗力が低下していると、たとえ普段の状態であっても不快症状がでてくることもあります)。最悪の場合、歯が破折してしまうこともあります。

普段ごはんを食べる時の歯と歯の接触は適切な荷重の咬合力で機能していますが、歯ぎしりやくいしばり等は歯の接触癖による咬合力はその約6倍もあり、歯や口腔内にかなりの負荷がかかっています。

▼咬合力
食事などの噛み合わせ時:12 ㎏/㎠
歯ぎしり、くいしばり時など:74 ㎏/㎠

歯ぎしりやくいしばりによる影響

海外にて、学生を対象に歯ぎしりの有病率を調べると、学生の約42%は歯ぎしりを経験していたが、参加者の約35%は自分が歯ぎしりをしていることに気付いていなかった、という研究がありました。それほど、歯ぎしりをしていることに気付きにくい現状があります。
実際、歯科医院にて歯の削れ方などを調べて初めて気付くことも多いです。

歯ぎしりやくいしばりを止める方法はないのか?

結論からいうと、歯ぎしりやくいしばりを完全に消失させる有効的な方法は現時点でありません。

歯ぎしりやくいしばりの原因は噛み合わせではなく、睡眠中の生理的状態に関連した中枢神経系の活動によることが大半であることが、最近の研究で明らかになってきています。日によって体調や精神的ストレスも異なるので、それによる歯ぎしりやくいしばりの活動も日によって異なります。

予防策として、歯や歯周組織への保護の手段としてナイトガードがあります。
ナイトガードはマウスピースの一種で歯ぎしりやくしばりによる影響を減少させる効果も認められています。

【典型的なナイトガード】

歯ぎしりやくいしばりでお悩みの方、歯がすりへっている、顎がだるいなど他にもなにか気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。