顎関節症とは?(歯科医師・井手由佳)

今月の歯科通信は、歯科医師・井手由佳が顎関節症について解説していきます。

「口をあけようとするとあごがいたい」「あごを動かすときに音がする」「あまり大きく口があかない」「急にかみ合わせが変化した」「あごがとじない」などの症状がありますか?これらは顎関節症の主な症状として現われてきます。

顎関節症とは?

顎関節症とは、1つの病気につけられた病名ではなく、顎関節や筋肉が痛くなったり、口を開けると音がしたり、大きく口が開けられなかったりする病気の群を一括してつけられた病名です。

ほおっておいたら症状がひどくなるか?

ある調査によると、さまざまな年齢を対象とした集団で、関節音(あごを動かすときに出る音)がする人は約30%、その中の約20%は徐々に症状が悪化すると推定されました。しかし、この悪化した状態をほおっておいても、その70%は1年後には症状が改善しており、残りの30%もそれ以上悪化することはないと考えられています。顎関節症による不自由さは、時間がたつにつれて、大部分の人があまり感じなくなることが多いのです。

顎関節症の原因は?

顎関節症はいくつかの要因が重なっておこります。積み木に例えると、積み木のひとつひとつが患者さんのもっている要因で、ひとによって積み木の種類が違っていたり、同じ種類の積み木でも大きさが違っていたりします。これらの積み木が重なって耐久力の限界を超えてしまうと、我慢できなくなって症状がでてきます。積み木が同じ高さまで積みあがっていても症状が出る人とでない人がいるのです。


患者さんがもっている要因、耐久力は人によってそれぞれ異なる要因が耐久力を超えると症状がでてくる。

なにげない日常の習慣が顎関節症の要因に

顎関節を発症させる要因として考える生活習慣には、主に以下のものがあります。
歯列接触・悪いかみ合わせ・歯ぎしり・食いしばり・ストレス・偏咀嚼など

顎関節かなと思ったら

とりあえず一週間は自分で様子を見て、一週間たっても症状が改善しないときは歯科医院へ。顎関節症は自然に症状が改善していく病気ですが、ごくまれに悪化して重症になる場合がありますので一週間たっても症状が改善しない時は歯科医院で診察を受けてください。一度、診察を受ければ、自分の症状がどの程度のものかわかり、必要以上に心配しなくて済むはずです。

<参考>
①顎関節症とかみ合わせの悩みが解決する本 木野 孔司 講談社
②アゴの痛みに対処する2011~2014 古谷野潔 他 クインテッセンス出版
③TMDを知る 井川雅子他 クインテッセンス出版
④顎関節症診療ハンドブック 本田和也 他 メディア株式会社 2016
⑤永田和裕 開口制限を伴う顎関節症の治療 on line 2010
⑥新顎関節症はこわくない 木野 孔司 砂書房